<定番文具コラム#001>これから100年後も書きたい一本──三菱鉛筆 Hi-UNI が“定番”である理由

三菱鉛筆Hi-UNI HBを特集した定番文具シリーズ#001のアイキャッチ画像 万年筆・ボールペン
定番には理由がある─シリーズ初回は、三菱鉛筆Hi-UNI HBから。

「HB」から始まる書く人生─“ふつう”の記号が記憶に残る理由

三菱鉛筆Hi-UNI HBのブランドロゴと軸デザイン
書く道具というより、すでに“作品”─Hi-UNIのロゴと茶褐色の軸。

初めて鉛筆を手にしたのは、いつだっただろう。六角形の軸をぎこちなく握り、ノートの上に初めて文字を刻んだ日。その瞬間から、僕らの“書く人生”は始まったのかもしれない。

世界中の誰もが通る道。それがHBという名の鉛筆だ。そしてそのHBの頂点とも言える一本が、三菱鉛筆の「Hi-UNI」だ。

「ふつう」の芯の硬さ、HB。

学校で配られるプリントに、家庭の引き出しに、子どもの用筆箱に。それが“標準”とされる理由を子供の頃はしならなかった。先生も教えてくれなかった。

でも大人になってふと思う。

HBとは「誰でも書けるように設計された硬さ」であり、同時に「誰の記憶にも残る書き味」なのだ。


鉛筆は、削るところからもう“書いている”

鉛筆は、書くときだけが「書いている時間」ではない。削るときから、すでに“思考”や“記憶”が始まっている。そして書き進めるうちに、芯がだんだん丸まっていく─その感覚もまた、手に宿る時間だ。

削ったばかりのHi-UNI鉛筆の芯先クローズアップ
芯を削った瞬間から、思考が始まっている─“尖った記憶”は手に残る。

だからこそ、僕たちは大人になっても、あえて鉛筆を選ぶのだろう。そして、超精密な仕事をする人──グラフィックデザイナー、クロッキーを描く画家、設計士などが、いまだに鉛筆を愛用している理由がよく分かる。

そしてもうひとつ。

僕はかつて、新聞記者にも鉛筆の愛用者が多いと、聞いたことがある。来る日も来る日も、言葉を紡ぐ仕事だ。そんな仕事だからこそ、身体と記憶と発想が宿るツールとして、鉛筆に自然と手が伸びるのだろう。

鉛筆は、書く道具であると同時に、「手と記憶をつなぐ道具」なのだ。


Hi-UNIという完成品─なぜこの鉛筆は“道具を超える”のか

Hi-UNIを手に取ってまず感じるのは、質感の高さだ。表面の滑らかなコーティング、しっとりとした木軸の手触り。削ったときに立ち上がる、ほのかな木の香り。

STADのアルミ製鉛筆キャップ。Hi-UNIと併用して使用
愛用するアルミキャップとともに。持ち運びの工夫もまた“道具への信頼”の証。

そして、芯を紙に滑らせたときの感触。ザラつかず、かといって滑りすぎず、まるで”紙と会話するような書き味”が、そこにはある。

これはただの鉛筆ではない。作品を描くための道具であり、思考を下書きするための“原型ツール”であり、記憶を留めるための触媒でもあるのだ。

Hi-UNI鉛筆とFaber-Castell削り器、アルミキャップの使用セット
僕の筆記セット──Hi-UNIを中心に、記憶と思考が並んでいる。

“変わらない”ようで“変わり続けている”─定番が定番であるための進化

Hi-UNIは、ずっと変わらないように見える。しかし実は、ロゴの印字やパッケージ、芯の品質などは
時代とともに細やかにアップデートされてきた。

定番」は、ただ何も変えないことではない。

「変えるべきではない本質」と「変えるべき部分」を見極め続けることによって、定番は“定番であり続ける”のだ。Hi-UNIもまた、静かに進化を続けてきたからこそ、今も変わらず多くの人の筆箱に残っている。


100年後に残したい一本─そして、あなたの“はじめの一本”は?

そして僕は思う。鉛筆は「残る文具」ではない。

書くことに携わるすべての者が、鉛筆で言葉を紡ぎ、発想を生み出し、後世に「残さなければならない」文具だ。そんなことを、いちいち僕が言わずともHi-UNIは、その“役割”をこれからも淡々と果たしていくだろう。

デジタル全盛の時代に突入した今だからこそ、人間が発想するには身体性が欠かせない。発想の結晶である言葉を生み出す筆記具にも、やはり“身体”が宿る必要があるのだ。

この一本が、100年後も”書くこと”を愛する人々のそばにありますように。そして、書くことの“はじめの一本”でありますように。

三菱鉛筆Hi-UNI HB、3本を横に並べた構図
3本のHi-UNI。言葉を生み出す道具には、静かな覚悟がある。

……おっと、そんな野暮なことを言うなと、Hi-UNIに叱られそうだな。

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