【THINK INK NOW BOOKs】センスは才能じゃない。違和感から“人を動かす言葉”を生み出す思考法 ──『センスのよい考えには、「型」がある』レビュー

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センスは才能ではなく「違和感」から育つ──人を動かす言葉「インサイト」を生み出す思考法を解説した『センスのよい考えには、「型」がある』レビュー

はじめに ―『No Reason』に”ガツン”とやられた話

『No Reason(理由はない)』

「コーラが飲みたくなるのはどんなとき?」との問いに対する答えである。

今回、レビューで取り上げる『センスのよい考えかたには、「型」がある』(佐藤真木・阿佐見綾香著/サンマーク出版)の「はじめに」でこのコマーシャルコピーが誕生した経緯が事例として挙げられている

『センスのよい考えかたには、「型」がある』(佐藤真木・阿佐見綾香著/サンマーク出版)書影
センスは才能ではなく「型」だった ── インサイト思考法を解き明かす一冊『センスのよい考えかたには、「型」がある』

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冒頭の数ページを読んだ瞬間、「ガツン」と頭を殴られた感覚があり、「クラッ」と眩暈がした。衝撃的だった。なぜか──言葉に誘発された感情が一気に走り出したからだ。

「わけもなく無性に飲みたくなる」との衝動を端的に表す言葉で、これ以上相応しいものは見当たらない。それを生み出す「自分では気がついてない、隠れた本音」、すなわち「インサイト」を発見する思考法を書いた本である。

それでは内容をレビューしていこう。


センスは“ひらめき”ではなく「型」だった

多くの人が「センスがある人」を、生まれつき感覚が鋭い人だと思っている。

しかし本書の主張は明快だ。センスとは偶然のひらめきではなく、再現可能な「型」によって生み出される、と。

その核心にあるのが「インサイト」だ。

人を動かす言葉、企画、ネーミング、表現の裏側には、必ず“まだ言葉になっていない本音”が存在する。

センスがある人とは、その本音に辿り着く思考の手順を持っている人なのだ。この視点を得たことで、「センスがない」と諦める理由は消えた。

問題は才能ではなく、思考の運び方にあったのである。


インサイトは“出世魚”のように育つ

本書では、インサイトの材料を見つけ、育てるプロセスを「出世魚モデル」として示している。

  • 日常の中の違和感に目を向ける(Step.1)
  • その違和感の裏にある「常識」を探る (Step.2)
  • 常識の裏に隠れた本音を見つける (Step.3)
  • その本音を自分の納得できる言葉にする (Step.4)
  • その言葉を人に信じてもらえる形にする (Step.5)

この流れを見ると、センスとは突然降ってくるものではなく、観察・解釈・言語化の積み重ねであることが分かる。

読後は日常の「なんか変だな」という感覚を、以前よりも意識するようになった。違和感は無視すべきノイズではなく、思考の入口なのだと認識が変わった。

『嫌われる勇気』ヒットの裏側にインサイトあり

世界累計1,350万部(※)を売り上げた大ベストセラー「嫌われる勇気」は読書人であれば誰でも知ることだろう。今日まで気がついていなかったのだが、この本のタイトルの裏側にこんなインサイトがあったとは。

(※)参照サイト:日本発の自己啓発本「嫌われる勇気」、世界で1350万部…時代も国境も超えた「生きづらさ」の壁(読売新聞オンライン 2025年5月11日)

たしかに、この本のネーミングが「アドラー心理学をヒントに人間関係を良くする方法」だったら、全く読む気は起きない。

人を動かすには動機がいる。本を手に取り、読むという行為も心を動かされることが出発点である。そのときまず目にする、書籍のタイトルはその行為に及ぶかの決め手になる。この考察は、モノ書きの末席に身を置く者として本当に脱帽。

この事例を知ったことで、書籍のタイトルを見る目は確実に変わるだろう。

AIに代替できない領域、ここにあり

さらに、本書では「感情は予想誤差が大きいときに生まれる」と説明される。人は無意識のうちに「こうだろう」という予測を持って世界を見ている。

そこにズレが生じた瞬間「え?」「ん?」という”違和感センサー”が発報するのだとされていた。当たり前すぎて、考えたこともなかった。しかし言われてみると、たしかに言葉の力は“説明力”ではなく“ズラし”にあるのだと理解できる。

最近、目覚ましい進化を遂げているAIは論理の整理や要約が得意だ。しかし「違和感」に気づき、それを起点に思考を進める能力は、人間の予測や経験に根ざしている。

だからこそ、違和感を見逃さない感性を磨くことが重要になる。本書が示しているのは、まさにその訓練法といえよう。

違和感に気づき人を動かすインサイトに発展させるのは、感情を持たないAIにはできない。当たり前なことであるが、”彼らに代替できない領域はここ”にある。


まとめ──センスがある人は「違和感を大事にする人」だった

本書を読んで得た最大の変化は、センスに対する認識だ。

センスは才能ではない。

違和感を放置せず、そこに立ち止まり、考え、言葉にしようとする姿勢の積み重ねだった。

次に本を読むとき、次に広告を見るとき、僕はまず「これはどんな本音を突いているのか?」と考えるだろう。

その視点を与えてくれたこと自体が、本書最大の価値であるのは──間違いない。


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