午後のスタバで、冷たいドリンクを飲みながら、ようやく人心地ついた。
ここは土曜日の午後の丸の内oazo。
週末だからだろうか、ビジネス街は観光地のように変貌していて、隣のテーブルにはカップル、向かいには買い物帰りの若者たち。そんな中、ひとりMacBookを広げて、ホッチキスと黒板消しの話を書いている自分に、ちょっとだけ笑ってしまう。
でも、たしかにあの空間は特別だった。
有明EX-GYMで開催された文具女子博。
朝から降り注ぐ太陽にくらくらしながらたどり着いた会場で、僕は“語りたくなる文具”と、いくつも出会った。
灼熱の東京、そして“避難先”スタバから綴る回想
東京駅に着いたのは、文具女子博の余韻を抱えたままの帰り道。でもその前に、体を冷やし、頭を整理する時間が欲しかった。

暑さは容赦なかった。
有明も暑かったけれど、東京駅周辺のアスファルトとビルの照り返しは、ある種の“都市灼熱地獄”。このままでは、文具の感動が汗で蒸発してしまいそうだった。
避難先に選んだのは、丸の内のスタバ。
アイスコーヒのグランデサイズを注文し、空調の効いた店内でリュックを下ろす。リュックの中には、まだ見ぬ“戦利品たち”が静かに眠っている。
僕はここで、今日の体験を記憶の中から少しずつ引き出しながら、文章を綴り始めた。テーマは決まっていた──「買ったもの」より、「語りたくなるもの」を。
文具女子博2025@有明EX-GYMへ
有明EX-GYMに着いたのは、午前10時過ぎだった。最寄りのゆりかもめの駅を降りた時点で、すでに人の波ができている。
小走りで向かう人、グループで連れ立つ人、親子連れ──目的地が同じだと分かっていても、誰もが少しだけ急ぎ足だ。

会場に入ってまず感じたのは、「広さ」と「熱気」の共存。体育館ならではの天井の高さが、たしかにゆとりを与えてくれる。けれど、そこに充満する文具好きの熱気は、なかなかのものだった。
目当てのひとつだったデルフォニックス(ロルバーン)ブースは、まさかの2時間待ち。
この情報はSNSでも出回っていたけれど、現場で実際に見ると圧倒される。行列に並ぶのも“体験”の一部とは思いながらも、ここは潔く諦めることにした。
“並んででも買う”から、“今この場で見つける”へ──思考の切り替えとともに、僕の中で文具女子博の楽しみ方も変わっていった。
買えなかった代わりに、“語れる文具”を持ち帰った
MAX|限定ホッチキス──機能派メーカーの“遊び心”が光る

混雑の波に身を任せながら、ふと目に留まったのがMAXのブースだった。文具女子博に合わせて限定ホッチキスを出していた。

パッケージからして通常モデルとは異なり、イベント感をしっかり感じさせるデザイン。それでいて、造りはあくまでMAXクオリティ──“かわいい”と“プロ仕様”が見事に共存している。
「ちゃんと使えるものを、ちゃんと遊ぶ」──そんなブランドの姿勢がにじみ出た一品だった。
日本理化学工業|黒板消しが、スマホを拭く日がくるとは

妻に「黒板消しのカタチをしたスマホクリーナーがあるらしいよ」と聞いていた。最初は「ネタ系かな?」と思っていたけれど、会場で見つけて一転、その完成度に唸った。

製造元は日本理化学工業。
チョークで知られるこの会社が、こんな可愛らしいプロダクトを手がけているのは、なんとも粋だ。
ノスタルジーと実用性の融合。
このアイテムは、“語りたくなる文具”という言葉がぴったりだった。
アラビックヤマト|見慣れたあの形に、“新しさ”が宿る瞬間

アラビックヤマトといえば、誰もが知っている液状のり。その“いつもの形”に、新製品が出ていた。

見慣れているからこそ目を引く違和感。「なんかちょっと違う?」と気づいて手に取ると、中身にも工夫が詰まっていた。ノリを引いた部分に色がつくらしい。
生活にすでに溶け込んでいる文具が、新しい顔を見せる瞬間──こういう発見が、文具イベントの醍醐味だと感じる。
まとめ──“消費”ではなく、“体験”としての文具女子博

会場を出る頃には、手にはいくつかの小さな文具が、心にはいくつかの“語りたい気持ち”が残っていた。戦利品の数ではなく、出会いの質。僕にとって今回の文具女子博は、そんな“再発見の場”だった。
強烈な西日が照りつける丸の内を歩きながら、僕はもう一つの目的地へと向かった。静かな展示室で、アートと向き合うために。
『文具とアート』
手で見るものと、目で、いや心で感じるもの。両方に共通しているのは「心のととのえ方を知る」ということかもしれない。
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