文具が、いま“静かにアツい”
「ねえ、これ買ってもいい?」
そう言って親御さんの袖を引っ張る、女子中学生の声が聞こえてきました。
5月18日(日)東京・蒲田「大田区立産業会館PiO」で開催された第8回 文具マーケット。
晴れた週末、僕が訪れたその会場は、文具をめぐる“ちいさな物語”であふれていました。
手にした木軸ペンをうっとりと見つめる男の子、
ガラスペンの試し書きに夢中になっている女の子、
その隣でスマホ片手に値段をそっと確認するお母さん──。
彼らは皆、休日のリラックスした雰囲気ながら、どこか誇らしげに見えました。
年齢も性別も関係ない。
純粋に「文房具が好き」という想いだけで、
これだけ多くの人が同じ空間に集まっていることに、僕は静かに感動していました。
文具は単なる道具じゃない。
それは、ひとりひとりの“好き”を形にするツールであり、
学びのスタート地点であり、ときに日常をちょっとだけ豊かにしてくれるもの。
このレポートでは、そんな現在進行形の文具カルチャーの空気感を、現場で感じたままにお伝えしていきます。
「文具って、やっぱりいいな」──そう思っていただけたら、うれしいです。

文具マーケット、いざ会場へ
入場開始──まだ静かな空気のなかで
僕が会場に到着したのは、プレミアムチケットによる先行入場が始まった直後の11:15頃。
この時点ではまだ“メッチャ混み”というほどではなかったものの、すでに会場は6割ほどの入り。
出展者も来場者も、どこか期待に満ちた空気をまとっていて、じんわりと高揚感が広がっていました。
12時半、一般入場のラッシュが始まる
12:30から一般入場が始まると、一気に場内が賑やかに。
お目当てのブースへ一気に向かう人、手帳を見比べている人、Xで話題の商品を探している人。
まるで大型ライブの物販列のようなエネルギーが、文具を中心に生まれている。
──この熱、やっぱり本物だと感じました。
みんな、何を求めて来たのか
「自分だけの文具」と出会うために
印象的だったのは、
中高校生と思しき子たちが、迷いなく“いいもの”を選び取っていたこと。
ガラスペン、木軸ペン、限定ノート……
おじさんの僕がためらうような”いいお値段”のものを、
まるでアイドルグッズを買うかのように手に取っていました。
それは単なる“消費”ではなく、「これが好き」と表現する行為だったように思います。
親子でシェアする“好き”という気持ち
「買ってあげるよ」ではなく「一緒に選ぼうか」──そんな親子の姿も多く見かけました。
文具を通じて、世代を超えた対話や発見が生まれている。
文具って、やっぱり素敵なコミュニケーションツールなんだなと実感しました。
売れていたのは、こんな文具たち
ガラスペン、木軸、手製ノート──いま注目のアイテム
イベントで人気を集めていたのは、素材や使い心地にこだわった「一点もの」感のある文具たち。
たとえば木軸ペン、手製のレターパッド、限定カラーのガラスペンなど。
手に取った瞬間「欲しい!」と直感できるアイテムが、ちゃんと売れていました。
見せ方で勝負!POPとSNSが客を呼ぶ鍵に
商品自体の魅力に加えて、目立っていたのは「見せ方」の工夫。
POPのセンス、ロゴ入りディスプレイ、そして事前のSNS投稿。
会場の混雑度に比例するにつれて、差が出ていたのは事前の“仕掛け”ができているかどうか、だったように思います。
文具は“体験”で選ばれる時代へ
香りと手触りを持ち帰る──香木のペン立て
今回もっとも僕の心を掴んだのは、「ふぉれすと木工房」さんの香木製ペン立て。
実はこれ、前回の文具マーケットで買ったんですが………。
家で使ってみたら想像を遥かに超える良さだったんです。湿度の高い時期に部屋中に漂うウッディで爽やかな香り。それがあまりにも心地よく、今回はリピート購入しました。

やすりがけワークショップで気づいたこと
今回はなんと、ペンレストの“やすりがけ”を自分で体験できるワークショップまで。
触れて、削って、オイルを塗って。
手を動かして仕上げたアイテムには、自然と“愛着”が宿ります。
文具はもう「買う」から「作る・味わう」の『作り出す体験』へ──そんな転換点にいるのかもしれません。
このペン立てとの出会いを語ったエッセイ
このペン立てとの出会いにはちょっとしたエピソードがあるんです。
それをnoteで書いています。今回の記事と合わせてご覧ください。
🔗書斎に香る、あの日の記憶──香木のペン立ては「いいね!」の巻
<ハスヌマゴロー(蓮沼五朗)発信のnote>
「語る」文具たち──ポッドキャストの新しいかたち
会場で出会った『ブングスキーラジオ』
そしてイベントスペースでは、文具ポッドキャスト番組「ブングスキーラジオ」の公開収録が行われていました。なんと僕も、「THINK INK NOWを立ち上げた理由」や「万年筆との出会い」について語らせてもらえることに。

「文具のある生活」が声でつながっていく
この番組のいいところは、“文具が好き”って想いを、声で届けてくれるところ。
製品のスペックや価格ではなく、「なぜこれが好きか」「どう使ってるか」といったストーリーが語られることで、まるで“友達との会話感覚”で楽しめます。これも文具文化の新しい形だと思いました。
あの日、文具熱は続いていた
丸善oazoで #3776 センチュリーを衝動買い
そんな、イベントの余韻に浸りながら記事のネタ作りにと向かったのは、東京駅近くの丸善 oazo。
ここの3Fにあるレンタルスペースでは、パソコンを使っての作業が出来るんです。
フリーランス志向を持っている僕はそんなのに憧れてましてね。
その前に4階の文具売り場を”定点観測”。
そこで待っていたのは、深いブルーのペン軸が輝く”プラチナ万年筆「#3776 センチュリー」”。
販売スタッフさんから発せられた「来月から8,000円値上がりしますよ」の”キラーフレーズ”にダメを押され、気づけば財布からクレカを取り出していました(笑)。

「買ってよかった」と思える1本との出会い
帰宅して香木のペンレストにそっと置いてみたとき、
あまりにしっくり馴染んでいる姿に、「これは運命だったんだ」とすら感じてしまいました。
こういう偶然の出会いもまた、文具好きの醍醐味です。


まとめ──やっぱり、文具はおもしろい
「書く」ことが、こんなにワクワクするなんて
手帳、万年筆、ガラスペン、ノート──
会場を歩きながら、何度も「これもいいな」「あれも使ってみたいな」と心が躍りました。
思えば、こんなにワクワクしながら“道具”を見たのは久しぶりかもしれません。
次は6月の文具女子博、そして次回9月の文具マーケットへ
文具の世界は、決して一度きりの“お祭り”では終わりません。
2025年6月26日(水)〜29日(土)には「文具女子博(東京・有明)」が、
そして次回「第9回 文具マーケット」は9月13日(土)に開催予定とのこと。
(告知フライヤー参照)

また“あの熱気”に出会える日が楽しみです。
THINK INK NOWは、引き続き”現場の空気感を丸ごと”お届けしてまいります。
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