ロルバーンは買えなかったけれど──文具女子博・有明で出会った“語れる文具”たち

文具女子博・有明会場のイラストと「語れる文具たち」というタイトル入りアイキャッチ画像 イベントレポート
ロルバーンは買えなかったけど——文具女子博2025・有明で出会った、“語れる文具”たち。

午後のスタバで、冷たいドリンクを飲みながら、ようやく人心地ついた。

ここは土曜日の午後の丸の内oazo。

週末だからだろうか、ビジネス街は観光地のように変貌していて、隣のテーブルにはカップル、向かいには買い物帰りの若者たち。そんな中、ひとりMacBookを広げて、ホッチキスと黒板消しの話を書いている自分に、ちょっとだけ笑ってしまう。

でも、たしかにあの空間は特別だった。

有明EX-GYMで開催された文具女子博

朝から降り注ぐ太陽にくらくらしながらたどり着いた会場で、僕は“語りたくなる文具”と、いくつも出会った。

灼熱の東京、そして“避難先”スタバから綴る回想

東京駅に着いたのは、文具女子博の余韻を抱えたままの帰り道。でもその前に、体を冷やし、頭を整理する時間が欲しかった。

文具女子博2025の会場内の様子。広々としたホールに文具ファンの熱気が充満している。
ホールの広さを圧倒する文具ファンの熱気漂う、文具女子博のひとコマ。

暑さは容赦なかった。

有明も暑かったけれど、東京駅周辺のアスファルトとビルの照り返しは、ある種の“都市灼熱地獄”。このままでは、文具の感動が汗で蒸発してしまいそうだった。

避難先に選んだのは、丸の内のスタバ。

アイスコーヒのグランデサイズを注文し、空調の効いた店内でリュックを下ろす。リュックの中には、まだ見ぬ“戦利品たち”が静かに眠っている。

僕はここで、今日の体験を記憶の中から少しずつ引き出しながら、文章を綴り始めた。テーマは決まっていた──「買ったもの」より、「語りたくなるもの」を。

文具女子博2025@有明EX-GYMへ

有明EX-GYMに着いたのは、午前10時過ぎだった。最寄りのゆりかもめの駅を降りた時点で、すでに人の波ができている。

小走りで向かう人、グループで連れ立つ人、親子連れ──目的地が同じだと分かっていても、誰もが少しだけ急ぎ足だ。

有明 GYM-EX外観の写真
ゆりかもめ「有明テニスの森駅」から歩くとほどなく見えてくる、有明 GYM-EXの外観。

会場に入ってまず感じたのは、「広さ」と「熱気」の共存。体育館ならではの天井の高さが、たしかにゆとりを与えてくれる。けれど、そこに充満する文具好きの熱気は、なかなかのものだった。

目当てのひとつだったデルフォニックス(ロルバーン)ブースは、まさかの2時間待ち。

この情報はSNSでも出回っていたけれど、現場で実際に見ると圧倒される。行列に並ぶのも“体験”の一部とは思いながらも、ここは潔く諦めることにした。

“並んででも買う”から、“今この場で見つける”へ──思考の切り替えとともに、僕の中で文具女子博の楽しみ方も変わっていった。

買えなかった代わりに、“語れる文具”を持ち帰った

MAX|限定ホッチキス──機能派メーカーの“遊び心”が光る

MAXの限定ホッチキス(文具女子博限定デザイン)
MAXの“遊び心”があふれる文具女子博限定モデルのホッチキス。ブルーからの針も購入した。

混雑の波に身を任せながら、ふと目に留まったのがMAXのブースだった。文具女子博に合わせて限定ホッチキスを出していた。

ステープラーのカーラーが選べる。MAXの限定ホッチキスの本体デザイン。
ステープラーのカーラーが選べる。MAXの限定ホッチキスの本体デザイン。

パッケージからして通常モデルとは異なり、イベント感をしっかり感じさせるデザイン。それでいて、造りはあくまでMAXクオリティ──“かわいい”と“プロ仕様”が見事に共存している。

「ちゃんと使えるものを、ちゃんと遊ぶ」──そんなブランドの姿勢がにじみ出た一品だった。

日本理化学工業|黒板消しが、スマホを拭く日がくるとは

黒板消し型スマホクリーナーの背面ディテール
日本理化学工業さんの黒板消し型スマホクリーナーのディスプレイ。

妻に「黒板消しのカタチをしたスマホクリーナーがあるらしいよ」と聞いていた。最初は「ネタ系かな?」と思っていたけれど、会場で見つけて一転、その完成度に唸った。

黒板消し型のスマホクリーナー、日本理化学工業製
懐かしさと革新が同居する、黒板消し型スマホクリーナー

製造元は日本理化学工業

チョークで知られるこの会社が、こんな可愛らしいプロダクトを手がけているのは、なんとも粋だ。

ノスタルジーと実用性の融合。

このアイテムは、“語りたくなる文具”という言葉がぴったりだった。

アラビックヤマト|見慣れたあの形に、“新しさ”が宿る瞬間

アラビックヤマトといえば、誰もが知っている液状のり。その“いつもの形”に、新製品が出ていた。

アラビックヤマトの新製品、限定パッケージ仕様
アラビックヤマトの新製品。文具女子博限定パッケージ仕様。

見慣れているからこそ目を引く違和感。「なんかちょっと違う?」と気づいて手に取ると、中身にも工夫が詰まっていた。ノリを引いた部分に色がつくらしい。

生活にすでに溶け込んでいる文具が、新しい顔を見せる瞬間──こういう発見が、文具イベントの醍醐味だと感じる。

まとめ──“消費”ではなく、“体験”としての文具女子博

会場を後にする直前に撮影した戦利品一式

会場を出る頃には、手にはいくつかの小さな文具が、心にはいくつかの“語りたい気持ち”が残っていた。戦利品の数ではなく、出会いの質。僕にとって今回の文具女子博は、そんな“再発見の場”だった。

強烈な西日が照りつける丸の内を歩きながら、僕はもう一つの目的地へと向かった。静かな展示室で、アートと向き合うために。

文具とアート』

手で見るものと、目で、いや心で感じるもの。両方に共通しているのは「心のととのえ方を知る」ということかもしれない。

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