【THINK INK NOW BOOKs】世界は思っているほど単純じゃなかった──『世界の大転換』を読んで考えたこと

『世界の大転換』(小泉悠著/SB新書)を読み、世界は思っているほど単純ではなかったと考えたことをまとめたTHINK INK NOW BOOKsのブックレビュー記事アイキャッチ ブックレビュー
【THINK INK NOW BOOKs】世界は、善悪や正義だけでは語れなかった──『世界の大転換』(小泉悠著)を読み、世界情勢を「構造」から考え直した。

防衛は保険と同じ──日本が直視すべき安全保障の現実


この比喩は、とても分かりやすく、同時に重い。保険とは「使わずに済むのが一番いい」ものだ。それでも人は、万が一に備えて保険に加入する。

安全保障も同じはずなのに、日本では長らく「防衛=戦争」かのような語られ方をしてきた。そしてそれを語ると「右か左か」というレッテルも貼られてしまう。だが本書が示しているのは、感情論ではなく外から見た現実だ。

どれだけの備えをしているかは、周辺国から見れば「この国は、どこまで本気で自国を守るつもりなのか」という意思表示になる。

そしてこの引用も読んでほしい。

毎日のようにメディアで目にする「台湾有事」というトピックス。しかし言葉だけが独り歩きして、具体的なリスクや備えについての議論は、驚くほど少ない。

平和を願うことと、現実を見ることは矛盾しない。むしろ、現実から目を逸らすことのほうが、はるかに危うい。

中国の弾道ミサイル1300発が、常に日本を射程にする現実。背筋の寒くなる思いがする。


おわりに|世界は、そんなに単純じゃない

『世界の大転換』を読み終えて、強く残った感覚がある。それは、「世界は分かったつもりになった瞬間、見誤る」ということだ。

トランプを分断の象徴として切り捨てることも、プーチンや習近平を狂気の独裁者として単純化することも、感情的には分かりやすい。だが、それでは何も見えてこない。

権力者は構造の中で誕生し、国民もまた、歴史や恐怖、利害の積み重ねの中で動いている。

平和を願うことは大切だ。だが同時に「見たくない現実」から目を逸らすことと、平和主義は同義ではない。

感情に寄り添う言葉だけで世界を語ることは、むしろ危うさを孕んでいる。

この本が与えてくれたのは、答えではない。世界を善悪で切り分ける前に、一度立ち止まり、構造から考え直す視点だった。

では、僕たちは何を基準に世界の現実を見ればいいのか。誰の言葉の、どこを信じ、どこに疑問を抱くべきなのか。

世界はそんなに単純じゃない。

だからこそ、物語に飛びつかず、現実を見つめ、国のあり方を考え続けることが、いま最も誠実な態度であると思う。


謝意

なお今回レビューした書籍「世界の大転換」(小泉悠著)は、参加中のSNSコミュニティー「ツナグ図書館」を通じて「SBクリエイティブ様」よりご恵贈いただきました。関係各位様にはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


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