はじめに|なぜブログ記事は読まれないのか
せっかく記事を書いたのに読まれない。アクセスはあるのに、最後まで読まれている気がしない。ブログを書いていると、そんな悩みにぶつかることがある。
ブログは画像も使えるメディアだが、結局のところ主役は「言葉」だ。言葉が弱ければ、どれだけ記事を書いても読者の心には届かない。
では、どうすれば「伝わる文章」が書けるようになるのか。
そのヒントは、コピーライティングの基本とされる「ペルソナ設定」の一歩先にある。それは、ペルソナを設定するだけではなく「憑依させる」という発想だ。
コピーライティングの基本「ペルソナ設定」
ブログをWebビジネスに活用するなら、「誰に向けて書くのか」を明確にする必要がある。いわゆるターゲットの設定だ。
そこでよく使われるのが「ペルソナ設定」という手法である。
架空の人物に、
- 年齢
- 性別
- 職業
- 年収
- 趣味
などを設定し、その人物に向けて記事を書く。
たとえば、
- 女性
- 30代
- 23区内在住
- オフィスワーカー
- カフェ巡りが好き
といった具合だ。多くのブロガーやマーケターはここまで実践している。しかし、ここで止まってしまうことが多い。
これだけでは、その人物はまだ紙の上の設定に過ぎない。
設計図はある。だが、そこに登場する人物に血が通っていると感じられないのだ。
ペルソナは「設定」ではなく「憑依」させる
ここで必要になるのが「憑依」という発想だ。オカルトの話ではない。要するに、取り憑かれたかのように、その人物になりきって書くということである。
ペルソナを外から観察するのではなく、その人物の内側から世界を見る。
その人の、
- 感情
- 不安
- 興味
- 生活感
を、自分の身体に通して書く。
僕の感覚で言えば「その人物の脳で感じ、その人物の手で書く」というイメージだ。キーボードを打つのは自分の手だが、その文章を考えているのは「自分ではない誰か」である。
ある種の演技に近い。落語の名人芸のように「横丁のご隠居さん」になりきるのだ。この感覚を掴むと、文章は急に生き生きし始める。
憑依力を鍛える方法|文学を読み、書き抜く
では、この「憑依力」はどうやって鍛えればいいのだろうか。僕が効果を感じている方法がある。
それは「文学作品を読むこと」、そして「文章を書き抜くこと」である。
とくに小説は、人物の内面を描く技術の宝庫だ。登場人物の感情、葛藤、視線、空気。それらを言葉で表現するための工夫が詰まっている。
ただし、読むだけでは足りない。印象に残った一文をノートに書き写す。登場人物を頭だけの理解に留めず、手に馴染ませる。
この作業を繰り返すと、言葉の感覚が少しずつ身体に染み込んでくる。
夏目漱石『それから』の名描写
たとえば、夏目漱石の『それから』にはこんな一節がある。
忽ち赤い郵便筒が目に付いた。するとその赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで…赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞いには世の中が真っ赤になった。そうして、代助の頭を中心としてくるりくるりと焔の息を吹いて回転した。── 夏目漱石『それから』新潮文庫 (344ページ)

ここでは「赤」という色が、単なる視覚情報ではなく、登場人物の心理と結びついたイメージとして描かれている。
郵便ポストの赤。看板の赤。
やがて世界そのものが赤く染まる。
色彩と感情が重なり合い、読者の脳内に渦のようなイメージが生まれる。こうした文章を繰り返し読み、そして書き抜く。

それだけで、言葉の感度は確実に磨かれていく。
まとめ|ペルソナに命を吹き込むために
僕は読書ノートを作り、印象に残った文章を書き抜いている。読んだだけの文章は、驚くほど簡単に忘れてしまう。
しかし書き写した言葉は、不思議と身体に残る。ふとした瞬間に「あの表現、よかったな」と記憶がよみがえる。
そして文章を書くとき、その言葉の断片が自然に浮かび上がってくる。これは語彙の暗記とは少し違う。むしろ言葉のリズムや感覚が身体に残るという感覚に近い。
ペルソナ設定は、確かに大切だ。しかし、それはあくまで「型」に過ぎない。本当に読者の心に届く文章を書くためには、その型に命を吹き込む必要がある。
その方法の一つが「ペルソナ憑依ライティング」である。それを実践するには文学を読み、心を動かされた「言葉」や「心理描写」を書き抜くことが大きな力になる。
まずは文学作品を読んでみてほしい。そして印象に残った一文を、ノートに書き抜こう。その小さな習慣が、あなたの文章を確実に変えていくはずだ。
良い文章は、突然書けるようになるものではない。読み、書き抜き、身体に染み込ませた言葉が、ある日ふと文章として立ち上がる──これが、文章力を養う強力な手法である。
あとがき|参考図書『本をすすめる 書評を書くための技術』
なお最近この書籍を読んだ。
『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤孝太郎著/本の雑誌社)

読了したあと、過去の記事をブラッシュアップしたくなり、この記事「憑依ペルソナライティング 改訂版」を書いたとの顛末である。
ここまで言うならこの本のレビューも書かねばなるまい。私淑する近藤さんへのリスペクトを込めて、近々公開する予定です。
🔗「面白かった」では、本は売れない──近藤康太郎『本をすすめる』に学ぶ書評の技術(近日公開)
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