【THINK INK NOW BOOKs|読書と書く技法】夏目漱石『それから』に学ぶ文章術 ──「ペルソナ憑依ライティング」

夏目漱石『それから』に学ぶ文章術「ペルソナ憑依ライティング」|THINK INK NOW BOOKs 読書と書く技法シリーズ ブックレビュー
夏目漱石『それから』の名文から学ぶ文章術。文学の書き抜きが、ブログの文章力を鍛える。

はじめに|なぜブログ記事は読まれないのか

せっかく記事を書いたのに読まれない。アクセスはあるのに、最後まで読まれている気がしない。ブログを書いていると、そんな悩みにぶつかることがある。

ブログは画像も使えるメディアだが、結局のところ主役は「言葉」だ。言葉が弱ければ、どれだけ記事を書いても読者の心には届かない。

では、どうすれば「伝わる文章」が書けるようになるのか。

そのヒントは、コピーライティングの基本とされる「ペルソナ設定」の一歩先にある。それは、ペルソナを設定するだけではなく「憑依させる」という発想だ。


コピーライティングの基本「ペルソナ設定」

ブログをWebビジネスに活用するなら、「誰に向けて書くのか」を明確にする必要がある。いわゆるターゲットの設定だ。

そこでよく使われるのが「ペルソナ設定」という手法である。

架空の人物に、

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 年収
  • 趣味

などを設定し、その人物に向けて記事を書く。

たとえば、

  • 女性
  • 30代
  • 23区内在住
  • オフィスワーカー
  • カフェ巡りが好き

といった具合だ。多くのブロガーやマーケターはここまで実践している。しかし、ここで止まってしまうことが多い。

これだけでは、その人物はまだ紙の上の設定に過ぎない。

設計図はある。だが、そこに登場する人物に血が通っていると感じられないのだ。

ペルソナは「設定」ではなく「憑依」させる

ここで必要になるのが「憑依」という発想だ。オカルトの話ではない。要するに、取り憑かれたかのように、その人物になりきって書くということである。

ペルソナを外から観察するのではなく、その人物の内側から世界を見る。

その人の、

  • 感情
  • 不安
  • 興味
  • 生活感

を、自分の身体に通して書く。

僕の感覚で言えば「その人物の脳で感じ、その人物の手で書く」というイメージだ。キーボードを打つのは自分の手だが、その文章を考えているのは「自分ではない誰か」である。

ある種の演技に近い。落語の名人芸のように「横丁のご隠居さん」になりきるのだ。この感覚を掴むと、文章は急に生き生きし始める。


憑依力を鍛える方法|文学を読み、書き抜く

では、この「憑依力」はどうやって鍛えればいいのだろうか。僕が効果を感じている方法がある。

それは「文学作品を読むこと」、そして「文章を書き抜くこと」である。

とくに小説は、人物の内面を描く技術の宝庫だ。登場人物の感情、葛藤、視線、空気。それらを言葉で表現するための工夫が詰まっている。

ただし、読むだけでは足りない。印象に残った一文をノートに書き写す。登場人物を頭だけの理解に留めず、手に馴染ませる。

この作業を繰り返すと、言葉の感覚が少しずつ身体に染み込んでくる。


夏目漱石『それから』の名描写

たとえば、夏目漱石の『それから』にはこんな一節がある。

夏目漱石『それから』(新潮文庫版)の表紙。明治時代の町並みを描いたイラストが印象的。
夏目漱石『それから』(新潮文庫)。色彩と感情を重ねた文章表現は、憑依ライティングの参考になる。

ここでは「赤」という色が、単なる視覚情報ではなく、登場人物の心理と結びついたイメージとして描かれている。

郵便ポストの赤。看板の赤。
やがて世界そのものが赤く染まる。

色彩と感情が重なり合い、読者の脳内に渦のようなイメージが生まれる。こうした文章を繰り返し読み、そして書き抜く。

夏目漱石『それから』の一節を書き抜いた読書ノート。文章力を鍛えるための書き抜きメモ。
夏目漱石『それから』の名描写を書き抜いた読書ノート。印象に残った文章を書き写すことで、言葉の感覚が身体に残る。

それだけで、言葉の感度は確実に磨かれていく。


まとめ|ペルソナに命を吹き込むために

僕は読書ノートを作り、印象に残った文章を書き抜いている。読んだだけの文章は、驚くほど簡単に忘れてしまう。

しかし書き写した言葉は、不思議と身体に残る。ふとした瞬間に「あの表現、よかったな」と記憶がよみがえる。

そして文章を書くとき、その言葉の断片が自然に浮かび上がってくる。これは語彙の暗記とは少し違う。むしろ言葉のリズムや感覚が身体に残るという感覚に近い。

ペルソナ設定は、確かに大切だ。しかし、それはあくまで「型」に過ぎない。本当に読者の心に届く文章を書くためには、その型に命を吹き込む必要がある。

その方法の一つが「ペルソナ憑依ライティング」である。それを実践するには文学を読み、心を動かされた「言葉」や「心理描写」を書き抜くことが大きな力になる。

まずは文学作品を読んでみてほしい。そして印象に残った一文を、ノートに書き抜こう。その小さな習慣が、あなたの文章を確実に変えていくはずだ。

良い文章は、突然書けるようになるものではない。読み、書き抜き、身体に染み込ませた言葉が、ある日ふと文章として立ち上がる──これが、文章力を養う強力な手法である。


あとがき|参考図書『本をすすめる 書評を書くための技術』

なお最近この書籍を読んだ。

『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤孝太郎著/本の雑誌社)

『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)のカバー写真
『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)

読了したあと、過去の記事をブラッシュアップしたくなり、この記事「憑依ペルソナライティング 改訂版」を書いたとの顛末である。

ここまで言うならこの本のレビューも書かねばなるまい。私淑する近藤さんへのリスペクトを込めて、近々公開する予定です。

🔗「面白かった」では、本は売れない──近藤康太郎『本をすすめる』に学ぶ書評の技術(近日公開)


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