はじめに
本を選ぶとき、僕は「信頼性」と「利便性」を最優先にしています。世の中には、読書体験を左右するほどの情報が溢れているけれど、そのすべてが“読む価値のある本”へと導いてくれるわけではありません。
むしろ、情報が多いほど判断が難しくなる。だからこそ、自分なりの基準を持つことが欠かせません。本選びは、読む前からすでに“知的体験”が始まっています。僕が採用しているのは次の三原則です。
まず「新聞書評」はハズせない
僕にとって、本選びの第一候補は新聞書評です。現在日経新聞を購読していますが、同紙の読書欄は、ビジネス・科学・人文のバランスが良く、話題本に流されない堅実さを感じます。また、新聞書評が信頼できるのは“編集部のフィルターがきちんと働いている”と感じられる点です。広告的な思惑が入りにくく、内容そのものの価値を見極めているなと感じるのです。
さらに書評の執筆者も信頼できます。大学教授、現役作家、批評家、専門ライター。いずれも“読者の時間を奪う責任”を理解した書き手が並びます。誰が紹介しているかが分かるだけでも、情報の信頼性は格段に高まるものです。
そして新聞の強みは、大手4誌(読売・朝日・毎日・産経)であれば図書館へ行くと無料で読めること。定期購読していなくても、毎週のように最新の書評情報に触れられる。質の高い選書情報を無理なく得られるこの方法は、多くの人が思っている以上に強力です。
【具体例】11/29(土)日経朝刊の読書欄から拾った2冊
具体例として、先週(11/29)実際に日経の読書欄から2冊の新刊書籍を拾いました。どちらも「これは読まねば」と感じた良書です。

“13歳”という年齢で区切るタイトル設計が秀逸で、哲学の入り口を開く一冊。著者は哲学と科学の両軸を持ち、思考の基礎を日常の視点からやさしく、しかしズレずに語る構成。
教育観にも通じる期待値の高い本です。
『無数の言語、無数の世界』(ケイレブ・エヴェレット/みすず書房)

みすず書房らしい、学際的で深みのあるテーマ。言語の多様性が人間の認知や世界の捉え方をどう形づくるのか──読む前から世界が広がる感覚を与えてくれる本。丁寧に翻訳されていると想像でき、じっくり読みたくなる一冊です。
信頼できる出版社の“編集哲学”に乗る
次に参考にするのは、出版社の公式サイトです。出版社にはそれぞれ“編集の哲学”があり、それがラインナップに凝縮されています。僕が信頼している出版社は、日経BOOKS、講談社、みすず書房、岩波書店、新曜社、左右社、筑摩書房、ハヤカワ、筑摩書房。いずれも思想・人文・社会科学の核に踏み込む良書が揃っているレーベル。
逆に、即席本や話題先行のラインで構成されやすいレーベルは、選書の段階では除外することもあります。批判ではなく、“読書の軸をブレさせない”ための判断です。
出版社を軸に本を選ぶということは”プロ編集者の目利き”に便乗するということ。いい編集者がつくる本は、目次の構造から訴求ポイント、引用の調整に至るまで、すべてが整っている。これが読後の納得感の高さに直結します。
書店店頭での“直感”を最後のフィルターに
本好きにとって大型書店は読者と出版社をつなぐ知の最前線。そこで、売られている本には、SNSやECサイトとは異なる“文脈”があります。また書店の書棚が、出版社・書店員・読者の三者の判断が重なって構成されていると感じるんです。
書籍を手に取り、本の装丁、カバーデザイン、帯の文言、目次の構造、ページの手触り、同じ棚に並ぶ本の顔ぶれ──こうした“物性”を含めて直感をはたらかせ、読むか否かの判断ができるのは書店の店頭だけです。
特に思想書・人文書を多く読む僕にとって、店頭での直観は非常に重要です。“買うべき本”は、手に取った瞬間、いい意味での緊張感が走り「お前はこれを読むのだ」と、もう一人の自分が耳元でささやくのです。
Xの書籍紹介も参考にはなる。ただし“厳しい目”で選別する
X(旧Twitter)の書籍紹介ポストも、もちろん参考にします。良い本と出会うきっかけになることも多い。ただし、SNSはどうしてもノイズや思惑が入りやすい媒体です。
- PR投稿の可能性
- インプレ(反応)優先の構成
- 表層的な紹介になりやすいこと
そのためSNSの情報は“補助的”に扱い、内容が本当に信頼できるかを厳しい目で選別するようにしています。
なお、僕自身もXで書籍紹介をしていますが、これは読後のアウトプットであり、本選びをする段階でSNSに依存しているわけではありません。「本を選ぶ媒体(ポスト)」と「内容を発信する媒体」は役割が異なります。
信頼性を起点にすれば、読書は安定する
今一度、僕が本を選ぶときに参考としている情報源をまとめておきます。
- 新聞書評
- 出版社サイト
- 書店店頭での直感
- 補助的なSNSの活用
この4つをバランスよく使い分けると、読書は驚くほど安定します。読む本が変われば、考え方が変わる。考え方が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、生き方が変わる。
だからこそ、選書には“信頼性”という足場を置きたいのです。
本を読むとあなたの時間は確実に奪われる。だからこそ、本は慎重に選びたい。良書を選び、そして時間をかけてじっくり読み込む。読んだ一冊一冊の積層こそTHINK INK NOW が大切にしている読書技法なのです。
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