「第三次世界大戦」という言葉を、僕たちはどれくらい現実のものとして受け止めているだろうか。
はじめに──「第三次世界大戦」という言葉にどう向き合うか
最近は「第三次世界大戦」という言葉を、よく目にするようになった。
ロシアによるウクライナ侵略、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の軍事的台頭。ニュースを断片的に追っているだけでも、世界が不穏な方向へ進んでいることは感じ取れる。ただ同時に、その言葉が持つあまりの強さゆえに、「怖い」「考えたくない」「どうしようもない」と、思考を止めてしまっている自分がいるのも事実だった。
そんなときに手に取ったのが、池上彰さんの『第三次世界大戦 日本はこうなる』(SB新書)である。

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この本は、不安を煽るための本ではない。かといって、楽観的な希望を与えてくれる本でもない。池上さんらしい語り口で、現在の世界情勢と日本の立ち位置を、できるだけ分かりやすく、整理して提示してくれる一冊だ。
本書を読みながら、僕は次第に「これは“第三次世界大戦”を予言する本ではなく、“考えるための入口”を用意する本なのだ」と感じるようになった。
では、この本は何を教えてくれるのか。そして、読んだ僕たちは何を考え、どう行動すべきなのか。この記事では、本書の内容をなぞるだけでなく、読後に残った違和感や、僕自身の考えも交えながら、「いま、この本を読む意味」を整理してみたい。
池上彰は世界情勢をどう整理しているか
台湾有事は「日本の問題」として語られている
池上さんの説明が生々しいのは、中国・台湾問題を「日本の安全保障」として語っている点だ。たとえば、台湾有事の際、アメリカ軍がどこから出動するのか。その答えとして、池上さんはこう書いている。
台湾統一のために武力を行使した中国に対し、アメリカが台湾を守ると決断した場合、アメリカ軍はどこから出動するでしょうか。(中略)一番近い沖縄の基地から出動することになります。(98ページ)
中国としては、台湾制圧の邪魔をされないように、早めにアメリカ軍の力を削ぎたいと考えるはずです。沖縄の基地からアメリカ軍の戦闘機が飛び立ってくるのであれば、それを事前に叩いておこうということで沖縄の基地にミサイルを撃ち込む可能性は当然あるわけです。(98ページ)
そして、話は台湾有事だけでは終わらない。
ロシア・ウクライナ戦争が示す「後戻りできない構図」
そして池上さんは、ロシアのウクライナ侵略についてこう述べています。
かねてよりロシアは、「通常兵器による攻撃であっても、国家の存立が危険にさらされた場合は核兵器を使うことができる」としており、プーチン大統領が核兵器を使うかもしれないという心配が急速に高まっています。(156ページ)
しかし、万が一そんなことになった場合、アメリカやNATOがどう出るかです。これまでのように、戦闘はウクライナ軍に任せて、背後から武器支援をするというやり方を続けるわけにはいかなくなるでしょう。
アメリカが直接、軍事介入する可能性が出てきます。そしてロシア軍とアメリカ軍が直接交戦することになれば、NATO加盟国はアメリカ側に立ってアメリカと一緒にロシアと戦うはずです。(157ページ)
ロシアの侵略がエスカレーションし、アメリカが軍事介入した結果、
これはもう後戻りのできない戦争、すなわち第三次世界大戦の勃発です。(157ページ)
ものすごいリアリティーを伴った最悪のシナリオである。

僕たちは「第三次世界大戦の戦前」にいるのではないか
そして本書の「はじめに」で池上さんはこう述べている。
今後は第三次世界大戦の「戦前」だと称されるようになるかもしれないのです。(12ページ)
これは、この本の全編を貫く明示的なテーマではないだろうか。読み進めている間、この「第三次大戦の戦前」という言葉が頭にこびり付いて離れなかった。
たしかにこの考え方を前提にして、中国・ロシア・北朝鮮をめぐる情勢を一つずつ追っていくと、その言葉の現実性を否定できない。そして現状の日本を取り巻く安全保障環境は、決して歓迎できるものではなく「第三次世界大戦の戦前」という言葉には、取り返しのつかない過去の記憶が重くまとわりつく。
戦争という行為は「強力な火器を持って、相手国に攻撃を加え、国土を焦土化し、非戦闘員を含む人々を殺傷する行為」である。それは「相手国を回復不能な状況に追い込み屈服させ、要求を強制させること」であるならば、言葉を失うほどの戦慄を覚える。
だからこそ重要なのは、不安や危機感を煽ることではなく、「現実を直視し続ける姿勢」なのだと思う。池上さんの語り口が一貫して冷静なのは、この問題を感情で処理してはいけない、という強い意志の表れにも見える。
緊迫する世界情勢は、歴史上の事件でも、遠くの出来事でもない。
そして、いつ戦争に巻き込まれるか、知らなかったでは済まされないほど、不安定な世界に僕たちは生きている。
「怖いから」ではなく「冷静になる」ために
『第三次世界大戦 日本はこうなる』は、不安を煽るための本ではない。同時に、安心させてくれる本でもない。世界の現実を、できるだけ正確に、分かる形で差し出してくる本だ。
だからこそ、この本は「怖いから読まない」のではなく、現実を知り、分かるところから考えて「冷静になる」ための入口として読む価値がある。
僕がこの本を誰に勧めるかと問われたなら、世界情勢に関心はあるが、難しい議論から距離を置いてきた人たち。中高生から、現代社会に生きる多くの人に、手に取ってほしい一冊だと答えたい。
考えることを止めないために。その最初の一冊として。
謝意
なお今回レビューした書籍「第三次世界大戦 日本はこうなる」(池上彰著)は、参加中のSNSコミュニティー「ツナグ図書館」を経由して「SBクリエイティブ様」よりご恵贈いただきました。関係各位様にはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
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