中学生のとき数学でつまずいた僕は、案の定落ちこぼれた。そして親からは「お前の学力で入れる大学はない!」と決めつけられ、最終学歴は工業高校卒。
しかし、いざ社会へ出ると、周りには輝かしい経歴の同世代がいた。やがて僕は「学歴なんて関係ない。役立たずな大学卒を見返してやる」という、やや荒れ気味な学歴コンプレックスを持つようになる。
それでも、学士の資格が欲しいという気持ちは消えず、通信制大学へ二度挑み、二度とも中途で挫折。けれどそこで「新書」というジャンルを知ったことは、僕の人生にとって大きな救いだった。
それ以来、小説よりも新書を手に取ることが多くなった。新書の魅力は何といっても「価格」と「サイズ」だろう。
ただ、それだけではない。知の最前線で奮闘している研究者の専門的な知識や見解が、一般読者にも届くカタチで凝縮されていることが最大の魅力である。
はじめに
世の中での出来事に疑問を感じたときや、流行などの社会現象に違和感を覚えたときに、僕は自然と書店の新書コーナーを訪れる。
まず足を止めるのは2大ブランドの、”岩波新書”と”講談社現代新書”の書棚の前。でも最近は、知りたいことをタイムリーに応えてくれている”講談社現代新書”を手に取ることが多い。
今日はその中から印象に残った二冊を紹介いたします。
「オッサンの壁」(佐藤千矢子著/2022年4月20日)

政治記者として第一線で働いてきた著者が、日本社会に根強く残る「男性優位文化」を描いた1冊である。
この書籍を読みながら、”耳の痛む場面”がいくつもあった。なぜなら僕自身が立派な“オッサン側の人間”だからだと、改めて思い知らさせた。けれど、不快ではない。むしろ、真面目で誠実な姿勢の文章は、読むほど胸に落ちていく。
とくに、この言葉が心に残っている。
オッサンたちは「ああ、女って面倒臭い」と考えているのかもしれない。これまで男社会で、あまり説明はしなくても、阿吽の呼吸で飲み込み、筋違いや理不尽なことがあっても男は家族のために我慢して耐えて皆やってきてくれたのに、と思っている人も多いかもしれない。だが多様性というのは、ある意味面倒臭いことを避けては実現されないことだ。阿吽の呼吸で飲み込んで、皆が働く時代は終わった。女性の話ばかりしてきたが、これは障害を持つ人たちとの関係でも、性的な少数者との関係でも、共通することではないだろうか。(227ページ:第5章 壁を壊すにはより)
これほど端的に「多様性」を語った文章を、僕は他に知らない。それは批判ではなく、社会を前へ進めるための視点として書かれている。
男性優位社会の歪み。それを模倣してしまった”オッサン化した女性”たち。そして、働くという営みの中に横たわる構造の問題。どこかで、自分の話でもあるのだ。
会社で働く人なら、きっと何かを感じる一冊だと思う。
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「〈私〉を取り戻す哲学」(岩内章太郎著/2023年12月20日)

スマホが常に手の中にあり、ネットと切り離される時間がほとんどなくなった今。僕らは本当に、自分の人生を生きているのだろうか。
そんな問いを投げかけてくる本だ。
とくに印象的なのは「私」の存在感に関する考え方。あらゆるものを自由に操作できる環境では、むしろ「私」は希薄になっていく。
(一)<私>の認識は一面的であり、完全なものではあり得ない。また、<私>の存在は「弱さ」や「脆さ」を抱えている。それゆえ、<私>は、認識においても、有限であらざるを得ない。
(二)<私>の自己イメージを自由に操作することで、<私>の存在感は薄れていく。<私>の実在の本質条件は、<私>の自由にならないものから受ける「抵抗」と、その接触が引き起こす「摩擦」である。(7ページ:まえがきより)
ここにある通り、思い通りにならない現実との摩擦が、私という存在を実感させてくれる。そんな視点が提示されている。
SNSを見ていると、不思議と孤独を感じる瞬間がある。あれは何なのだろう。この本を読んで、それが少し言語化された気がした。
他人に違和感を覚えるときも、社会に怒りを感じるときも、この社会に自分が存在している証なのかもしれない。
ネットとの距離感に悩んでいる人を、温かく見守り、寄り添うような一冊だと思う。
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新書は「学び直しの入門書」
いま僕は「民主主義とは何か」(宇野重規著/2020年10月20日)を読み進めている。

民主主義ってなに?と問われると、
民主主義とは選挙で選ばれた議員が、議会で予算や法律を定め、行政を動かし国を治める。
その程度の知識しかない。しかしこの本で、
- 歴史はどうか?
- 世界はどうか?
- どんな問題があるのか?
身近すぎて深く考えてこなかった「民主主義」の知識を持てる気がする。それも新書というフォーマットに落とし込まれているからこそだろう。
それにしても新書は「学びながら生きていこう」という姿勢を支えてくれる存在だ。
人生の後半に差しかかったからこそ、新書を読み続けたいと思う。静かに、しぶとく生きていくために、強かなこの社会と向き合うために。
講談社現代新書なら、その希望を叶えてくれるに違いない。
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