エグゼクティヴの机上にふさわしい逸品──ペリカン スーベレーン M800 レビュー|信頼と美を兼ね備えたドイツ製万年筆

alt="ペリカン スーベレーン M800と記事タイトルを載せたThink Ink Nowのアイキャッチ画像" 万年筆・ボールペン
Think Ink Nowオリジナルのアイキャッチ画像。静かな高級感をまとったペリカン M800の魅力を視覚でも伝えます。

静かに主張する美──エグゼクティヴが選ぶドイツ製万年筆、M800

ブランド「ペリカン」の歴史と哲学

1838年創業のペリカンは、ドイツ・ハノーファーを本拠地とし、180年以上の歴史を持つ老舗ブランドです。インクメーカーとして始まった同社は、やがて筆記具の製造に乗り出し、万年筆の進化とともにその名を世界に広げました。現在も伝統と技術革新を両立させる企業姿勢は、世界中の愛好家から高く評価されています。

以前レビューしたパイロット『カスタムURUSHI』と比べても、M800は日常使いでの実用性において際立った魅力を持っています。▶️ カスタムURUSHIのレビューはこちら

スーベレーンシリーズの中でのM800の位置づけ

「スーベレーン(Souverän)」は“卓越した”という意味を持つ言葉で、その名のとおりシリーズ全体に気品と実用性を備えています。中でもM800は、大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズ感と、金属パーツによる適度な重量感が特徴。バランスのとれた筆記体験と高級感を同時に味わえる、シリーズの中心的存在です。

ペリカン スーベレーン M800 緑縞モデルと木製ペンレストの写真
伝統的な緑縞のボディと金属パーツの組み合わせが美しい、ペリカン M800。机上の風格が漂います。
ペリカン スーべレーン M800のキャップ天冠に刻まれたブランドロゴのクローズアップ
キャップの天冠に刻まれたペリカンのロゴ。さりげない部分にまで宿る気品は、愛好家の心を掴みます。

18金ペン先のしなりが生む極上の筆記体験

独特の筆記感覚──滑らかでしなやか

M800に搭載されている18金のペン先は、ペリカン独自の研磨技術によって仕上げられています。書き出しのなめらかさ、走りのスムーズさ、紙への当たりの柔らかさ──すべてが極上。まるで紙の上を“舞う”ように、筆記の時間そのものが心地よく感じられるのです。

この筆記の最中、柔らかくしなるペン先の感触は本当に絶妙。このペンを持つ者だけが知る、他の万年筆では得がたい魅力です。このしなりが、文字に個性を宿し、書くことへの愛着を一層深めてくれることでしょう。

ペリカン M800の18金ペン先のクローズアップ写真
ペリカン独自の研磨技術で仕上げられた18金ペン先。筆記時に生まれる“しなり”が、書く悦びを深めてくれます。

筆圧のコントロールと相性の良さ

日本人に多い“強めの筆圧”にも適応できる堅牢性を保ちつつ、軽く書いても筆記がしっかり残る柔軟性も兼ね備えています。これはM800が持つ絶妙な設計バランスによるものです。

結果として、長時間の会議メモや日記の筆記でも手が疲れにくく、ストレスを感じることがありません。まさに実用品としての完成度が高い万年筆です。

手書きの時間をより豊かにするための文具選びについては、こちらの過去記事でも紹介しております。▶️『瞬記』にフィットする文具で心を整える

ペリカン M800で「THINK INK NOW」と筆記している写真
ペリカンM800で書いた「THINK INK NOW」。インクは4001ロイヤルブルーを使用。滑らかな筆記感が指先に伝わります。

なぜM800は「仕事道具」として優れているのか

デスクに映える風格あるデザイン

スーツにネクタイ、革靴、腕時計──エグゼクティヴが身につけるアイテムには“静かな主張”が求められます。M800のデザインもそのひとつ。ペリカンの口ばしを模した光り輝く金のペン先と、伝統的な緑縞のペン軸との組み合わせは、自己主張しすぎることなく、しかし確かな存在感を放ちます。

そして会議室や書斎に置かれたM800は、それだけで空間の緊張感を和らげ、知性と品格を演出するアイテムとなるのです。

実際に、こんなエピソードがありましてね。僕がカフェでこのペンを取り出したとき「おっ!ペリカンですか?お若いのにとても良き品をお持ちですな」と隣の老紳士から声をかけられたことがありました。

キャップの開閉、インク充填──日常使いの快適さ

ネジ式キャップは耐久性に優れ、M800のような大型万年筆にとって理想的な機構です。開閉の動作もスムーズで、一日に何度も使う場面でもストレスを感じません。

また、吸入式によるインク充填は、慣れると手間ではなく“儀式”のような楽しみに変わります。

手間を惜しまず使うことで、万年筆に対する愛着が深まっていく──そんな感覚もM800ならではです。

ビジネスシーンで“語れる一本”

M800は、単なる文房具ではありません。名刺交換の際にふと取り出せば「そのペン、いいですね」と話題になり、会議の合間にペンの話を通じて人間関係が和らぐこともあります。

道具が語り手になる。それがこの万年筆の魅力です。そして語られるのは、あなたの審美眼やこだわりそのもの。まさに“人格を映す道具”といっても過言ではありません。


私がM800に選んだインク──ペリカン 4001 ロイヤルブルー

落ち着きと視認性を両立する青

4001ロイヤルブルーは、ペリカンが誇る代表的なインクです。派手すぎず、暗すぎず、書いた文字が自然に目に入ってくる──まさに「仕事のためのブルー」。

公的な文書やビジネスノートでも浮くことがなく、印象を崩さない色味。M800との相性も抜群で、ペンの特性をより引き立ててくれます。

純正インクだからこそ活きるペンの性能

同じブランドのインクを使うことで、インクフローや発色、耐久性が安定します。万年筆は精密機械であり、純正インクを使うことは最も安全で確実な選択肢なのです。

とくにロイヤルブルーは洗浄性にも優れており、吸入式のM800を長く使い続けるうえで理想的な組み合わせだといえるでしょう。

ペリカン 4001 ロイヤルブルーのインクボトルと「THINK INK NOW」の筆記
普段使いの一本としておすすめしている、ペリカン 4001 ロイヤルブルー。 落ち着きと視認性を兼ね備えたこの青は、M800の魅力を最大限に引き立ててくれます。

長く使うために──メンテナンスと中古市場の視点

吸入式メカニズムと耐久性の高さ

M800は、きちんと手入れをすれば何十年と使える構造を持っています。内部のピストン式吸入機構も堅牢に作られており、日常的な清掃を行えば長年にわたり安定した筆記が可能です。

また、分解・修理が比較的容易なため、万年筆を「育てていく」楽しみも味わえます。これはカートリッジ式ペンにはない喜びです。

信頼できる中古販売店(Kingdom Noteなど)

新品では躊躇してしまう価格でも、中古市場なら状態の良いM800が手に入ることがあります。とくに筆記具専門のショップであれば、整備済み・保証付きの製品も多く、安心して購入できます。

僕自身も過去にKingdom Noteを利用した経験がありますが、コンディションの良さとアフターサービスの丁寧さには信頼を置いています。

合わせて読みたい(note記事のご案内)

ペリカン スーべレーンM800のように「書くこの魅力」を最大限に引き出してくれる文房具は、ときに感情の奥深くまで、届く言葉をもたらしてくれます。

こんな感情のインクの色の関係を、漱石文学と結びつけて綴ったnote記事も、よろしければぜひご覧くださいませ。▶️ インクは、感情の色をしている──文学と文具の静かな交差点


まとめ|「持つこと」が自分を整える筆記具

M800がもたらした変化

このペンを使い始めてから、文字を書く時間が“作業”から“自分と向き合う時間”へと変わりました。ひとつの道具が、思考のリズムを整え、所作に余裕をもたらしてくれる──そんな体験があったのです。

書き味、重さ、見た目、そのすべてが調和しているM800は、単なる筆記具ではなく、書く時間そのものの質を高めてくれる存在です。

高級万年筆との距離を縮める第一歩に

高級万年筆と聞くと、どこか“遠い存在”のように思われがちです。けれどもM800は、使う人の日常にすっとなじみ、無理なく寄り添ってくれる一本です。

もし、次の一本を探しているなら──そして「いい道具を使いたい」と思ったことがあるなら。M800は、その気持ちに静かに応えてくれるはずです。

実際にこのM800と合わせて愛用しているノートや文具については、別の記事で詳しく紹介する予定です(只今準備中)。

筆記具レビューと文章の背後には、こんな背景があります。
▶️ 筆者紹介|Think Ink Now 主宰・ハスヌマゴロウ

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