Web BIZ戦略論【#001】ー芸術作品からデザイン戦略を問う

Web Biz戦略論 第1号のタイトル画像。芸術作品を起点にWebデザイン戦略を考察するシリーズ記事。 Web運営日記
【Web Biz戦略論 #001号】芸術作品からデザイン戦略を問う──感性と構造が交差する、新シリーズの幕開け。

Webデザインにも芸術的審美眼が必要だ

文具女子博の帰り道、ふらりと立ち寄った三菱一号館美術館。

三菱一号館美術館の外観。2025年ルノワール展の会場となった。
ルノワール展の舞台となった三菱一号館美術館(東京・丸の内)
ルノワール展のパンフレットディスプレイの写真。
美術館入口手前に設置されたパンフレットディスプレイ(ポスター)。期待が静かに高まる。

ルノワールの作品を目の前にして、僕はただ立ち尽くしていた。

ルノワール作《髪長き水浴の乙女》。盛られた油絵具が柔らかい肌の質感を生み出している。
ルノワール作《長い髪の浴女:1895年》近づくと“木工ボンド”のような絵の具。なのに柔らかな肌にしか見えなかった。髪の毛のサラサラした質感にも注目したい。オランジューリー美術館、パリ

近づいて見ると、絵の具は厚く盛られ、木工ボンドのような質感さえある。油絵なら当たり前の質感であるのに、そこには柔らかい肌があった。髪はサラサラと風に揺れているように見え、目元には潤いが宿っていた。

──ただの絵の具のはずなのに、なぜこんなにも生きているように感じるのか?

それは美術館での体験であると同時に「デザインやWeb構築にも通じる問い”であった。

情報をどう“見せるか”ではなく、どう“響かせるか”

僕たちはWeb制作において、「見やすく」「分かりやすく」といった機能的な視点ばかりに偏りがちだ。

でもルノワールの絵の前では、“分かりやすさ”なんて問題じゃなかった。説明されなくても、感覚として「伝わってくる」何かがあった。

つまり、感性に届くデザインとは「構造の美しさ × 情報の余白から生まれるのではないか。

ルノワール作《花瓶の花》オランジュリー美術館、パリ
ルノワール作《花瓶の花:1898年》今にもこぼれ落ちそうな花弁を見事に再現。色彩も素晴らしい。オランジュリー美術館、パリ

芸術作品が語らないのに、心に残る理由

Webの世界では、伝えすぎてしまうことで“届かなくなる”ことがある。余白を恐れてすべてを埋めようとすると、かえって印象は薄まってしまう。

一方、芸術作品は語らない。でも問いを残す。それが、「観る人の中で意味が生まれる」構造になっている。

問いを投げかけてくるデザインこそ「強く印象」に残る。

これはアートの本質であり、Web戦略における“審美的設計”のヒントでもある。

ルノワールに学ぶ「距離感と階層構造」

ルノワールの作品をはじめキャンバスに描かれた油絵は、遠くから見ると柔らかく、近づくとざらついていた。一枚の画面の中に“階層”があり、視点の移動によって印象が変わる。

これはまさに、Webにおけるファーストビューと記事詳細の関係、トップページとカテゴリーページの設計思想に通じている。

どの距離でも“意味がある”構造──それが芸術であり、Web設計でもある。

ルノワール作《風景の中の裸婦》髪の流れや表情に微細なニュアンスが宿る。
ルノワール作《風景の中の裸婦:1883年》髪の流れや表情、柔らかく白い肌の質感に微細なニュアンスが宿る。オランジュリー美術館、パリ

僕たちのWebにも、芸術的審美眼が必要だ

芸術作品に触れるということは、感動することではなく、“なぜ感動したのか”を問う訓練なのかもしれない。

その問いを重ねることで、「なぜ伝わるのか?」「どうして響いたのか?」という視点が研ぎ澄まされていく。

それはそのまま、Webの構成、UI、文章設計にも活かせる。情報をどう置くか。どう余白を持たせるか。どこまで説明し、どこで黙るか。

すべての答えは、あの静かな絵の中にあった。


僕たちのWebにも、芸術的審美眼が必要だ。

感性で読み、構造で届ける。芸術と戦略が交差するところに、言葉とデザインの“深さ”は生まれる。

またWebの創作やデザインに関わるものとして”問い続ける姿勢”を持ち続けたい。


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