小さな一本が変えてくれた、万年筆への先入観──セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EF」レビュー

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EF」レビュー記事用 アイキャッチ画像 万年筆・ボールペン
セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EF」レビュー記事用 アイキャッチ画像。このペンをグリップした写真を添えた。書き味は「金ペン」そのものです。

はじめに

僕は万年筆を使いはじめたころ「大きくて存在感のあるモデルが良い」と思っていました。

重厚な軸、大きいニブ、ゆったりした筆記線。そうした“クラシックなイメージ”こそが万年筆を持つ最大の魅力だと信じて疑わなかったのです。

ところが、セーラー万年筆の「プロギアスリムミニ」に出会って、その思い込みは大きく変わりました。

長さ12.5cmの手のひらサイズなコンパクトボディ。そしてわずか16.8gと驚きの軽さ。

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」全景
セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」全景。長さ 12.5cm、重さ 16.8gの携帯性抜群のコンパクトボディながら万年筆独特のしなやかな書き味を両立している。
セーラー万年筆 プロギアスリムミニ EFニブ「ニブ(ペン先)」拡大図。
セーラー万年筆 プロギアスリムミニ EFニブ「ニブ(ペン先)」拡大図。長さわずか2cmといえども、このペン先のしなやかさを一度味わえばきっと手放せなくなる。

最初は正直「こんな小ささで快適に書ける?」と半信半疑でしたが、実際に書きながらしばらくすると、手放せない一本となっています。

今回の記事はそんな「ミニサイズながら魅惑の万年筆」について、僕自身の体験を交えてレビューします。


購入のきっかけと第一印象

購入日は2023年10月19日。Amazonでオーダーしました。ペンと同時にセーラーの顔料インク「青墨」も手に入れました。パイロット色彩雫「朝顔」と比べるとやや薄い発色ですが、落ち着いたブルーグレーのような色合いが魅力で、ビジネスにも日常にも自然に溶け込みます。

しかし、届いてすぐに試し書きしたときの第一印象は「ガリガリ感」が強かった。まるで針にインクをつけて書いているようで、滑らかさに欠ける感覚がありました。

それまで頻繁に使っていた万年筆が、これとは真逆のパイロットカスタムURUSHI Bニブということもあり「小さなペンは頼りないな」「これは買って失敗だね」と落胆したのを覚えています。

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ」とパイロット「カスタムURUSHI」の比較図。
セーラー万年筆「プロギアスリムミニ」とパイロット「カスタムURUSHI」の比較図。サイズ感の全く違う2本。それぞれ書くシーンを考えて使いたい。やはりプロギアスリムミニは外に持ち出して書くツールだと強く思う。

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書き心地が変わった瞬間

ところが数ヶ月前「使う頻度の低い万年筆を書いて育てよう」と思いたち、このペンでロルバーンの方眼罫に文字を書いてみたのです。これが思わぬ発見をもたらしたのです。

ペン先がマス目にぴったりはまり、これまで以上に整った文字が書ける。小さな字が乱れずに並ぶ気持ちよさは、いまでも鮮明に覚えています。そのとき「このペンは“書く相手”を選ぶのかもしれない」と直感しました。

セーラー万年筆プロギアスリムミニで実際文字を書いてみた。
セーラー万年筆プロギアスリムミニで実際文字を書いてみた。キャップポストしなくても長さは足りるので、とっさに思いつくアイデアも逃さずメモ可能だ。


実際、EDiTノートの薄紙でも裏抜けせず、トモエリバーのような繊細な紙でも問題なく使えました。さらに測量野帳スケッチノート(3mm方眼)では、小さな文字がくっきり並び、まるでこのペンのために用意されたかのような相性の良さを感じました。

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」を使ってコクヨ「測量野帳スケッチブック」に文字を書いてみた。
セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」を使ってコクヨ「測量野帳スケッチブック」に文字を書いてみた。滲みもなく、3ミリ方眼のマス目にジャストフィット。とても相性のいいコンビだ。
ブログ筆者愛用のコクヨ「測量野帳スケッチブック」
ブログ筆者愛用のコクヨ「測量野帳スケッチブック」。このノートが好きすぎて専用の革カバーに収納して使っている。
セーラー万年筆 顔料インク「青墨」
セーラー万年筆 顔料インク「青墨」。他社製のブルーブラックと比較すると若干薄めだが、それが功を奏して「裏抜け」せず書く相手を選ばないことになっている。

外観と携帯性

冒頭で申し上げた通り、プロギアスリムミニは「長さ12.5cm」「重さ16.8g」という超コンパクトボディです。

ズボンのポケットに入れてもかさばらず、手ぶらの外出にも難なく対応。僕はホワイト軸をチョイス。これが大正解で、軸カラーに清潔感があり、14金のEFニブと組み合わさることで小さいけれど、たしかな高級感を醸し出しています。

それにしても「手軽に持ち歩ける万年筆」という存在は、意外にありそうでありません。

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」を革カバーに収納した「測量野帳スケッチブック」と合わせてみた。
セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EFニブ」を革カバーに収納した「測量野帳スケッチブック」と合わせてみた。これ以上ない相性の良さを感じる。携帯性はもちろん申し分ない。

大ぶりなモデルは書きやすい一方で、持ち運びには気を遣います。プロギアスリムミニはその点で圧倒的に自由。

外出先でちょっとメモを取りたいとき、カフェでノートを書きたいとき、これなら自然に手が伸びます。


まとめ

セーラー万年筆「プロギアスリムミニ EF」は、サイズも軽さも従来の万年筆のイメージを覆す一本です。

最初は頼りなく感じても、紙やインクを選ぶことで本領を発揮し、日常に欠かせない相棒へと変わっていきます。

「どこでも書ける」「小さくても高級感がある」「自分の文字を整えてくれる」─
─そんな魅力を備えた万年筆は案外と少ないものです。

「大きいことは良いとだ!」との万年筆への先入観を持っている方こそ、ぜひ一度手にしてみてください。小さなボディの奥に、大きな可能性が宿っています。


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