薄く、柔らかく、でも芯がある紙
ふと、書きたくなるときがある。 言葉にならないまま浮かんでは消える思考を、どこかに引き止めておきたい。
そんな時、僕は決まって”ある”ノートを開く。 Takeo PaperのDresscoブランド「オニオンスキンペーパーノート」だ。 セミナーで講師の方から紹介されたとき、今まで味わたことのない紙の手触りに魅了され、買ってみたものの書棚に込んだままだった。
今日はその存在を思い出して、机の上に置いてみた。 表紙は落ち着いたマットホワイト。中をめくると、息をのむような薄さの紙が現れる。 商品名のとおり玉ねぎの薄皮。このネーミングには納得せざるを得ない。

光に透かすと、向こう側がうっすら見える。 でも、ペン先を走らせると、しっかりとインクを受け止めてくれる。 万年筆のインクが滲まない。この紙はなんとも不思議な魔法のようにも思える。
今日の出来事を、パイロット743のMニブで書いてみた。 “2025,5.24 Takeo Paper オニオンスキンにパイロット743 Mで書いてみた” 。試し書きに過ぎないこんな文章が、透ける紙に書かれるとなんとなく詩のように感じるのは僕だけだろうか?
本当に音もなく、するするとペンが滑っていく。紙とペンの相性がいいと、言葉が素直になる。 まるで、紙が「それでいいよ」と肯定してくれているようで、不思議と安心できるのだ。

書くことは、ひとつの儀式だ
1日の締めくくりにノートを開く。 お茶の湯気立つカップを横に、インクを補充しペン先を整える。 たったそれだけの動作が、仕事でざらついた気持ちをととのえてくれる。
ジャーナリングは、情報をまとめる作業ではない。 自分の奥底でざわめくものを、紙の上にそっと引き出すような営みだ。
オニオンスキンペーパーは、それにぴったりの紙だった。 その柔らかさ・軽さ・透明感。どれもが、“気持ちを受け止める余白”となっている。
このノートに向かうと、自然と書き方が変わる。 書こうとするより、浮かんだ言葉を拾い上げている感覚。 道具と向き合うことで、文体さえも変わるということを、僕はこの紙で知った。
パイロット743がもたらす書き味の静けさ
そして思った。これは紙だけの力じゃない。 パイロット743という万年筆との相性があってこそだ。

パイロットの743 Mニブは、決して太すぎず細すぎず、どんな紙にも馴染む万能選手だと思っていた。 でも、この紙に書くと、“万能”ではなく“洗練”に変わる気がする。

筆圧をかけなくても、インクがすっと紙に乗る。 けれど裏抜けはしないし、引っかかりもない。 滲まず、にじまず、ただ染み込んでいく。
そこに浮かび上がるインクの濃淡が、また美しい。 透ける紙だからこそ、その濃淡が生きる。 書いている最中に紙の向こう側を感じる──そんな体験がここにある。
竹尾という“紙文化”の裏方に、敬意をこめて
竹尾という会社は、紙の名前だけではなく、その存在自体が静かに気品を放っている。 「見本帖本店」という言葉の響きからして、文化の香りがする。
Dresscoレーベルは、実用性と美意識のバランスが見事で、 このオニオンスキンペーパーは、その象徴ともいえる一冊だと思う。

何かを書くとき、そこに“道具以上の意味”を感じさせるプロダクト。 それが、この紙とこのノートにはある。
書くという行為を、すこしだけ豊かにしてくれる紙
書くことに、特別な意味なんてなくていい。 でもたまに“儀式”のように感じられる瞬間がある。
ペンを持ち、紙に触れ言葉を綴る。その行為を「ゆっくり」「ていねいに」味わえる時間があるだけで、 僕の一日はいい時間へ変換される。
このオニオンスキンノートは、そんな感覚を作ってくれる”逸品”だった。
竹尾さん、素敵なノートをありがとうございました。明日も明後日も、書きたいと思います。
過去記事のご案内
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。さて私ども「THINK INK NOW」では今回の記事以外にも「書くこと」「万年筆レビュー」の記事がございます。
下記にリンクをご案内いたします。この機会にぜひお立ち寄りください。
🔗エグゼクティヴの机上にふさわしい逸品──ペリカン スーベレーン M800 レビュー
🔗「持つ悦び」と「書く意欲」が溢れ出す─Aurora Optima O’ Sole Mio レビュー
🔗「書くこと」は人生の軌跡を描く ― パーソナライズナラティブの力
コメント