“命日”を手帳が生み出す──忘れたくない感情に日付を与えるということ

オレンジ色のライトの下でノートに向かって書き込む手とペンのアップ。夜の静かな時間にジャーナリングをしている様子。 書く習慣
忘れてしまう前に、言葉にする──夜のひととき、記憶に命を吹き込むために手帳をひらく。

「命日」という言葉に、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか。


おそらく多くの人にとって、それは“誰かの死を悼む日”。だからこそ、手帳の話題に使うとギョッとする方もいるかもしれません。


ですが、ここでの「命日」は少し違います。


「記憶に命を吹き込む日」──ただ流れていくはずだった日常の中に、自分の感情や選択を記録し、意味づけする日として、私はこの言葉を使っています。


忘れるようにできている脳、だからこそ

人間の脳は、すべてを覚えていられるようにはできていません。むしろ、忘れる機能があるからこそ新しい情報を処理できる──それが“生きていくための知恵”なのです。


けれど、困ったことに「忘れてはならないこと」さえ、あっさり消えてしまう。ラベルもタグもつけられず、感情の揺らぎや大切な決断が、静かに遠ざかっていく。


だからこそ、手帳の出番です。


書き留めた瞬間に、記憶は“生き始める”

手帳に一言でも記すことで、その出来事は単なる記憶の断片ではなくなります。


「2025年4月24日、帰り道にふと涙が出た」──そんな一文でも、そこには確かな自分の生きた証が宿ります。


スケジュール管理のためではなく、自分の感情や思考に“命を与える”ために書く。それこそが、手帳のもう一つの使い方なのです。


それは“終わり”でもあり、“始まり”でもある

ある感情が終わったことに気づけるのは、手帳に残してあったから。


「あのときは確かに悩んでいた。でも、もう大丈夫だ」そう思えるのは、自分の変化を言葉で記録していたからです。


終わりを記すことは、新たな自分との対話の始まりでもあります。


私たちは未来にも命日を仕掛けられる

「命日」とは、死を悼む日ではなく、“記憶に命を吹き込む日”という意味で使っています。

日々の感情や選択に、ただ過ぎるだけの日付ではなく、“思い出すきっかけ”としての意味を与える──それがここでの「命日」です。

手帳には、過去だけでなく未来を書くこともできます。


「この日から私はやめる」「この日から始める」──そんな宣言を記すだけで、未来の自分が振り返る“意味ある日”が生まれます。


あなたが今日、何気なく書き込んだことが、数ヶ月後に「あの日が転機だった」と思えるかもしれません。


手帳は、感情の歴史を刻む装置

いつかページをめくったとき、「何もなかった」と思っていた日々に、たしかに感情があったことを思い出す。

それは、あなたがその時その瞬間に生きていた証です。

手帳は、感情に命を与え、日々に意味を刻み込む、あなた専用のアーカイブになってくれるのです。

忘れてしまうはずだった自分に、命を与えるために。
私は、今日も手帳をひらく。

今日のあなたの気持ちも、どこかに書き留めてみませんか。
小さな言葉でもかまいません。思い出したい未来の自分のために──。


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