はじめに|なぜ「面白かった」レビューでは本が売れないのか
最近思うことがある。自分の書評はどこまで、読んだ人の選書のヒントになっているのだろうか、と。正直に言えば自信なんてまったくない。
それでも、上手くなりたければ、読んで、考えて、そして書く。結局それを繰り返すしかないのだろう。しかしSNSを眺めていると、時々こんな文章を見かける。
本のタイトルを掲げているのに、内容はほとんど書き手自身の話。読書体験というより、個人的感想の連続だ。
「分かりみがすぎる」
「鼻血が出るほど共感した」
「首がもげるほどうなずいた」
それが書き手の読後感なのは分かる。けれど、そこに至った過程が語られていなければレビューとは言えない。
レビューを読む理由は「本のこと」を知りたいからだ。書き手の感情ではなく、その本がどんな内容で、どんな魅力を持っているのかを知りたい。
「ちゃんと本を紹介してくれよ」
そんな気持ちになるのは、僕だけなのだろうか。そう思いながらも、ふと不安になる。
「自分は書評を書いているつもりだけど、本当はどうなんだろう?」
そんなときに手に取ったのが『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)である。

私淑する名文家・近藤さんが、書評とは何か、そしてどう書くべきかを語った一冊だ。読み終えて感じたのは、書評とは単なる感想文ではなく「本をすすめるための技術」だということだった。
今回は最大級のリスペクトを込めて、この本をレビューしてみたい。
レビューとは何か──感想と書評は別のもの
では書評は文章じゃないのかというと、もちろん書評だって文章です。自分の人格がすべて出る。そうなんだけれども、書評はエゴの発露の場ではないということは、肝に銘じなくちゃいけない。(225ページ)
書評とは、単なる感想ではない。読後に感じたことを書くのは悪くない。だが、それだけではレビューとは言えない。近藤さんの言葉を借りれば「書評はエゴの発露の場ではない」ということだ。
この言葉は非常に重い。書評を書くとき、つい自分の感想を語りたくなる。しかし、レビューの主役はあくまで本である。
読者が知りたいのは
- この本のどこが面白いのか
- この本はなぜ読む価値があるのか
- この本にはなにが書かれているのか
であって、書き手の内面ではない。書評とは、読者と本をつなぐ橋のようなものだ。その橋を渡ることで、読者は新しい本と出会うことができる。
書評とは「本の光を屈折させる文章」である
真剣に作品と対峙すること。作品の光を自分のプリズムに通し、屈折して出てきた光を正確に、誠実に書く。忍耐強く言葉を探すことだ。(64ページ)
これは見事な定義だと思う。
本はそれぞれ固有の光を持っている。書評とは、作品が放つ強烈な光を受け止め、書き手の視点を通して読者に届ける行為なのだ。
それは単なる要約ではない。つまり書評とは本の紹介と、個人の視点が交差する場所なのである。
本の内容をただ説明するだけでも足りない。逆に自分の感想ばかりでも意味がない。その両方が重なったとき、書評ははじめて読者に届く。
提灯批評を書くな──書評家に必要な誠実さ
作品に対して謙虚になる、自分なんか分かっちゃいないんだと思う冷静さは大事。だけど「みんながいいって言っている大人気なんだから、持ち上げておこう」なんて提灯批評、幇間文章は決して書いてはいけない。(41ページ)
書評を書くとき、もっとも避けるべきもの。それは「提灯批評」だ。人気だから褒める。ベストセラーだから持ち上げる。それは批評ではない。むしろ批評の役割とは逆だろう。
批評家やレビューアーにはもう一つ重要な役割がある。
「これはマーケットからこぼれ落ちやっているんだけど、オリジナルな世界の見方で新しい文体を開発している意欲作なんだ」というような本や著者を発見するのも、批評家・ライターの役割でしょう。(157ページ)
売れている本だけではない。まだ多くの人に知られていない本を見つけ、紹介する。そこに書評文化の意味があるのだと思う。
まとめ|レビューとは「本に敬意を示す文章」
もっというと、著者さえ「そういうふうにも読めるのか」と驚く新鮮なレビューによって、本に新しい読者がつく。また新しい「読み」が加わる。批評によって本も生かされる。この事実は、どんな三下奴のライターでも胸に刻む責務がある。言葉は人を生かすし、人を殺すこともある。言語は、人類が発明した最大の利器だけど、最悪の凶器にもなり得る。(299ページ)
読書文化は、本を書く人だけで作られるものではない。
読む人。そして、本をすすめる人。この二つが揃って初めて文化になる。レビューを書くという行為は、その文化を支える仕事の一つだ。
本を読む。考える。
そして誰かにすすめる。
その積み重ねが、新しい読書を生む。この本を読んで改めて感じた。書評とは単なる文章ではない。それは本をすすめる技術である。レビューを書くという行為もまた、言葉を扱う仕事だ。
だからこそ、誠実でありたいと思う。僕自身まだまだ未熟だ。それでも今日も本を読み、考え、そして書き続けていきたい。書評とは本をすすめるとともに「本に敬意を示す文章」だからである。
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