【THINK INK NOW BOOKs】「面白かった」では、本は売れない ── 『本をすすめる』に学ぶレビューの技術

近藤康太郎『本をすすめる 書評を書くための技術』レビュー記事のアイキャッチ。「面白かった」では本は売れないという書評の本質を解説 ブックレビュー
近藤康太郎『本をすすめる 書評を書くための技術』(本の雑誌社)。書評とは感想ではなく、本の魅力を読者に伝える「すすめるための文章」であることを教えてくれる一冊。

はじめに|なぜ「面白かった」レビューでは本が売れないのか

最近思うことがある。自分の書評はどこまで、読んだ人の選書のヒントになっているのだろうか、と。正直に言えば自信なんてまったくない。

それでも、上手くなりたければ、読んで、考えて、そして書く。結局それを繰り返すしかないのだろう。しかしSNSを眺めていると、時々こんな文章を見かける。

本のタイトルを掲げているのに、内容はほとんど書き手自身の話。読書体験というより、個人的感想の連続だ。

「分かりみがすぎる」
「鼻血が出るほど共感した」
「首がもげるほどうなずいた」

それが書き手の読後感なのは分かる。けれど、そこに至った過程が語られていなければレビューとは言えない。

レビューを読む理由は「本のこと」を知りたいからだ。書き手の感情ではなく、その本がどんな内容で、どんな魅力を持っているのかを知りたい。

「ちゃんと本を紹介してくれよ」

そんな気持ちになるのは、僕だけなのだろうか。そう思いながらも、ふと不安になる。

「自分は書評を書いているつもりだけど、本当はどうなんだろう?」

そんなときに手に取ったのが『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)である。

『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)のカバー写真
『本をすすめる 書評を書くための技術』(近藤康太郎著/本の雑誌社)

私淑する名文家・近藤さんが、書評とは何か、そしてどう書くべきかを語った一冊だ。読み終えて感じたのは、書評とは単なる感想文ではなく「本をすすめるための技術」だということだった。

今回は最大級のリスペクトを込めて、この本をレビューしてみたい。


レビューとは何か──感想と書評は別のもの

書評とは、単なる感想ではない。読後に感じたことを書くのは悪くない。だが、それだけではレビューとは言えない。近藤さんの言葉を借りれば「書評はエゴの発露の場ではない」ということだ。

この言葉は非常に重い。書評を書くとき、つい自分の感想を語りたくなる。しかし、レビューの主役はあくまで本である。

読者が知りたいのは

  • この本のどこが面白いのか
  • この本はなぜ読む価値があるのか
  • この本にはなにが書かれているのか

であって、書き手の内面ではない。書評とは、読者と本をつなぐ橋のようなものだ。その橋を渡ることで、読者は新しい本と出会うことができる。


書評とは「本の光を屈折させる文章」である

これは見事な定義だと思う。

本はそれぞれ固有の光を持っている。書評とは、作品が放つ強烈な光を受け止め、書き手の視点を通して読者に届ける行為なのだ。

それは単なる要約ではない。つまり書評とは本の紹介と、個人の視点が交差する場所なのである。

本の内容をただ説明するだけでも足りない。逆に自分の感想ばかりでも意味がない。その両方が重なったとき、書評ははじめて読者に届く。

提灯批評を書くな──書評家に必要な誠実さ

書評を書くとき、もっとも避けるべきもの。それは「提灯批評」だ。人気だから褒める。ベストセラーだから持ち上げる。それは批評ではない。むしろ批評の役割とは逆だろう。

批評家やレビューアーにはもう一つ重要な役割がある。

売れている本だけではない。まだ多くの人に知られていない本を見つけ紹介する。そこに書評文化の意味があるのだと思う。


まとめ|レビューとは「本に敬意を示す文章」

読書文化は、本を書く人だけで作られるものではない。

読む人。そして、本をすすめる人。この二つが揃って初めて文化になる。レビューを書くという行為は、その文化を支える仕事の一つだ。

本を読む。考える。
そして誰かにすすめる。

その積み重ねが、新しい読書を生む。この本を読んで改めて感じた。書評とは単なる文章ではない。それは本をすすめる技術である。レビューを書くという行為もまた、言葉を扱う仕事だ。

だからこそ、誠実でありたいと思う。僕自身まだまだ未熟だ。それでも今日も本を読み、考え、そして書き続けていきたい。書評とは本をすすめるとともに「本に敬意を示す文章」だからである。


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