【Web運営日記特別編】ブログ記事に“憑依”せよ。ペルソナ設定だけでは刺さらない理由

ブログ記事に“憑依”せよというメッセージを記した、頭部から文字が噴き出すシルエットのイラストを用いたアイキャッチ画像。 Web運営日記
【Web運営日記特別編】“ペルソナを憑依させる”という発想で、文章力を高める方法を解説します。

はじめに

「せっかく記事を書いたのに、読まれない」「読者の反応が薄い」──そんな悩みを抱えている方、多いのではないでしょうか?

ブログは「文章で伝える」メディアです。もちろん画像も重要ですが、やはり主役は言葉。文章の力がなければ、読者の心には届きません。

では、どうすれば「伝わる」文章が書けるようになるのか?そのヒントは、コピーライティングにおける“ペルソナ設定”の一歩先──ペルソナを「憑依」させるという発想にあります。


コピーライティングの基本:ペルソナ設定

ブログをWebビジネスに活用しようとするなら、まず「誰に向けて書くか」が重要になります。いわゆる“ターゲットの明確化”です。

そこで登場するのが「ペルソナ設定」。架空の人物に年齢・性別・職業・年収・趣味嗜好を設定し、その人に向けて記事を書くという手法ですね。

たとえば、30代女性・都内在住・事務職・独身・趣味はカフェ巡り…といった具合です。ここまでは多くのブロガーやマーケターが実践しています。

でも、これだけでは不十分なのです。

設定しただけでは、その人物はまだ“他人”。たとえるなら、ただの紙の上の設計図。そこに“血”と“体温”を通わせるには、もう一歩踏み込む必要があります。


ペルソナを“憑依”させるということ

憑依と聞くと、少しオカルト的に感じるかもしれませんが、ここで言いたいのは「その人物になりきって書く」ということです。

ペルソナを“外から眺める”のではなく、“中から感じる”。あたかも、自分の中にその人物を住まわせて、代わりに書いてもらうような感覚です。

僕自身の感覚で言えば、「その人物の脳で感じ、手で書く」。キーボードを打つ手が、自分ではなく、誰かの手になったような気さえします。

ある種の演技、あるいは即興劇のようなもの。これを意識すると、文章が格段に生き生きとし始めるんです。


憑依力を高めるには?──文学作品を読み、書き抜く

では、どうすればこの“憑依力”を高めることができるのか?僕が実践して効果を感じている方法があります。それが、「文学作品を読む」こと、そして「書き抜く」ことです。

とくに人物描写に優れた小説を読むのが効果的です。古典でも現代小説でも構いません。重要なのは「読んで終わらないこと」。印象に残った一文を、ノートに書き写す。これだけで、言葉の感覚が身体に沁み込んできます。

たとえば夏目漱石の『それから』から、次のような一節──

忽ち赤い郵便筒が目に付いた。するとその赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで…赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞いには世の中が真っ赤になった。そうして、代助の頭を中心としてくるりくるりと焔の息を吹いて回転した。

『それから』夏目漱石 新潮文庫

夏目漱石『それから』(新潮文庫版)の表紙。明治時代の町並みを描いたイラストが印象的。
夏目漱石『それから』(新潮文庫)。色彩と感情を重ねた文章表現は、憑依ライティングの参考になる。

色彩と感情の渦を見事に重ね合わせた名描写です。まるで“赤”という感覚そのものが、読者の脳内に入り込んでくるような圧倒的な体験。

こんな言葉を繰り返し読み、書き抜くことで、「人物を描く」ことへの感度が磨かれていく。それがやがて、ペルソナの“憑依”を助けてくれるのです。

僕自身、読書ノートに書き抜きした文章を時々読み返しています。読みっぱなしだとすぐ忘れてしまいますが、書いておくと、必要なときに言葉の断片がスッと浮かんでくるようになるんです。


まとめ:ペルソナに命を宿らせるために

ペルソナ設定は、たしかに大切です。でも、それは「型」に過ぎません。本当に読者の心を打つ文章を書くには、その型に“命”を吹き込む必要があります。

憑依とは、その命の吹き込み方です。設定しただけの人物を、あなた自身の内側に降ろす。その感情で書く。そうすれば、読者に届く言葉になります。

まずは今日から、小説を一冊。印象に残った文章を一文。書き抜いてみてください。きっとあなたの中に、新しい語彙と感覚が芽生えるはずです。

そしてその言葉が、あなたのブログを、確実に変えていくことでしょう。

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